【ちょこれえと】 一花→小松
「キヨカドさん~」
小松の部屋の襖を勢いよく空けた一花は
瞬時に後悔した。
「あ」と思った直後
高く積み上げられた本という本は倒れ
自分の方へも落ちてくる。
「きゃぁぁ!!」
と大声をあげたものの、その口へほこりが舞いこみ
うっとすぐに口を閉じた。
「も~一花殿は…!学習してくださいよ~。
僕の部屋をあけるときは、そ~っと、ですよ~」
小松の方は、うまく本をかわしながら悪びれる様子もない。
「え、私が悪いわけ??この部屋が汚いのが悪いんでしょ!?」
一花がほこりを払いながら起き上る。
その手にはへしゃげた小さな箱があった。
「あぁーー!!潰れた!」
「なに?それ」
小松が潰れた箱を指さした。
一花がその箱を無理やりに直そうとすると、
力をいれた反対が余計に凹んだ。
「あぁ!も~だめじゃん~」
「だから、それ何??食べ物?甘いもの?何なに~?」
「これね、アルバートがくれたの!美味しい外国のお菓子よ!」
「やった!僕にくれるの~?」
「何でよ。自慢しにきただけよ。」
意地悪く一花は言ってみせるが、小松は待ってましたと言わんばかりにお茶を入れ始めた。
「ちょっと聞いてんの!?」
「まぁまぁ。ここ座って」
ほこりまみれの本を足で蹴飛ばして、
無理やり座る場所を作る。
ぺちゃんこになった座布団を探し出して
そこに座るようににっこりほほ笑んだ。
「さ、空けてあけて!!」
「も~しょうがないな・・・!」
一花はしぶしぶ座ると、その箱をあけてみせた。
中にちいさなちゃいろいチョコレートがふたつ。
小松が鼻を近づけると、かすかに匂いがした。
「う~ん。なんか嗅いだ事のない匂い…」
「うん…んでもって、黒い…食べられるの?コレ」
「アルバートが、おいしそうに食べてた…」
「ほんとに?」
「ホントに。」
「ほんと??」
「ホントだってば!」
小松が一粒つまんでみる。
じーと見つめては箱に戻した。
「キヨカドさん!男らしくたべなさいよ!」
「え~。だって~。なんかあやしいよ~?」
「あやしくない!だって、アルバートが、これは好きな人とたべる幸せの食べ物だって・・・!」
言い切って初めて赤面しだす一花に、小松はクスっと笑った。
「な、なんで笑うの!?!?何その余裕!!腹立つ!!」
「いや、別に…ゴメンゴメン。じゃ、食べてみる!」
真っ赤になる一花を横目に、小松はチョコレートを口に放り込んだ。
噛んだ瞬間広がる香り、「あ、おいひぃ」と呟いた直後、
口の中に流れ込んでくる何かに気がついた。
「うわ!なんか出てきた!!!」
「何が!?」
「…う~ん?お酒?かなぁ。」
「お酒?菓子の中に?んなワケないじゃない!」
「あ。一花殿はよしたほうが・・・!」
と小松の制止に間に合わず、一花は残った一粒を口に放り込んだ。
「おいし~!…おいひぃの???これ・・・?」
極度の下戸の一花には強烈すぎるリキュール。
飲み込んだ後の事は覚えていない。
次にきがついた時には、小松のせんべい布団に寝かされていた。
「あ、気がついた?大丈夫?水のむ?」
ぼんやりする視界に自分の顔を覗き込む小松の顔がやさしかった。
同時に、アルコールが苦手なのを知っているのに、あのチョコレートを渡してきたアルバートの顔が憎たらしく思えた。
「キヨカドさん・・・あのチョコ・・・美味しかった?」
「え?うん、僕はまぁまぁ好きかな。また食べたい。」
「そっか…じゃぁ結果オーライね。」
「ん?そだね、好きな人とたべる、幸せな食べ物なんでしょ?」
「そ、それは言わなくていいのよ!」
「いやぁ僕はうれしかったけどなぁ」
垂れ目がちな眼にしわをよせて、
ひだまりのような笑顔をみせる。
その手で一花のあたまを一撫でして、
また書き物をする机に戻った。
「あ、そうそう、さっきアルバート君が来てね、
お酒が入っているものを一花殿にあげちゃいけないよ、ときつーく叱っておいたからね」
「…アルバートなんていってた?」
「お酒だめなのネ~知らなかったネ~って言ってたよ。」
小松の似てないモノマネに突っ込みを入れ忘れるほど
一花は怒りに震えるのであった。
(アルバート…いつか殴る…!)
おしまい♪
[0回]
PR